飲食店の厨房には欠かせない設備のひとつが「グリース阻集器(グリストラップ)」です。
油や食品残渣が下水に直接流れ込むのを防ぎ、法律によって設置が義務付けられています。
ただ、グリース阻集器を正しく管理できていないと、
詰まり・悪臭・汚れの逆流など、営業に大きく影響するトラブルにつながることもあります。
この記事では、グリース阻集器の目的や基本構造、清掃方法・清掃頻度までをわかりやすく解説します。
日々のトラブル予防に、ぜひお役立てください。
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1.グリース阻集器とは?設置の目的・なぜ必要とされるのか?
グリース阻集器(グリストラップ)とは、厨房の排水に含まれる油脂や食品残渣をそのまま下水に流さないための装置です。
飲食店のシンクやフライヤー、厨房床下の排水管・排水溝には、見た目以上に多くの油分や細かな食品残渣が含まれています。
これらが下水に直接流れると、配管の詰まりや悪臭だけでなく、下水処理場への負荷増大や環境汚染の原因となりかねません。
そのため、ビル管法などの法律では、飲食店や食品工場などの事業者に対し、
油脂類を適切に捕捉・処理するための設備としてグリース阻集器の設置を義務付けています。
これは、店舗ごとの排水管理を徹底することで、地域全体の水環境(河川・下水処理施設)を守るためです。
グリース阻集器は、
• 油脂の固形化による配管の閉塞防止
• 厨房内の悪臭・害虫対策
• 下水道や自然環境への油脂流出の抑制
といった役割を果たし、飲食店の衛生管理と地域環境の両方を支える重要な設備なのです。
2.グリース阻集器の基本構造と役割
それでは、グリース阻集器の内部構造がどうなっているのか、具体的に見ていきましょう。

2-1.第1槽(食品残渣をバスケットで捕捉する槽)
第1槽は、シンクなどから流れてきた食品残渣を最初に受け止める部分です。
槽の中には「バスケット」と呼ばれるカゴ状の部品が設置されており、
野菜くず・麺類・揚げカスなどの大きな固形物をここでしっかりキャッチします。
ただし、すべての残渣を完全に取り除けるわけではありません。
バスケットをすり抜けるような細かな食品カスや油分を含んだ粒子は、
槽の底に徐々に沈んでいき、汚泥(スラッジ)として蓄積していきます。
2-2.第2槽(油脂を分離させる槽)
第2槽は、排水に混ざった油脂を分離するための槽です。
油は水より軽いため、時間をかけて水面に浮上し、冷えると固形化して油脂(スカム)の層をつくります。
2-3.第3槽(比較的きれいな排水を下水へ流す槽)
第3槽は、第1槽で捕捉した汚泥(スラッジ)と、
第2槽で分離した油脂(スカム)が取り除かれた、比較的きれいな排水がたまる槽です。
この状態の排水を「トラップ管」と呼ばれる配管を通して下水へと流す役割を担っているのが第3槽です。
つまり、グリース阻集器とは、
① 食品残渣をキャッチ・汚泥を沈殿(第1槽)
② 油脂を浮上・分離(第2槽)
③ きれいな排水だけを下水へ流す(第3槽)
という工程を順番に行うことで、食品残渣や油脂が直接下水へ流れるのを防いでいる装置なのです。
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3.グリース阻集器の清掃方法と清掃頻度|飲食店が守りたい基本ルール
3-1.グリース阻集器の清掃を怠るとどうなる?(トラブル例)
グリース阻集器の清掃を怠ると、汚泥(スラッジ)と油脂(スカム)が蓄積し、排水トラブルや衛生問題が起こりやすくなります。
特に多いのが「悪臭」と「詰まり」の2つです。
3-1-1.悪臭の発生・厨房環境の悪化
汚泥と油脂が槽内に残ったまま時間が経つと、腐敗して強い悪臭を発生させる原因となります。
ひどい場合は厨房全体、さらには飲食フロアにまで広がってしまうこともあります。
グリース阻集器およびその周辺から「ドブのような臭い」がしたら、汚泥や油脂が腐敗しているサインと言えます。
グリース阻集器の臭いについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
→グリース阻集器の臭いの原因と対策
3-1-2.排水管の詰まり・逆流トラブル
清掃が不十分な状態が続くと、固形化した油脂がグリース阻集器前後の配管に付着し、排水の流れを妨げることがあります。
その結果、
• 排水が流れにくくなる
• 配管が完全に閉塞(詰まり)する
• 厨房内に排水が逆流・あふれる
といったトラブルに発展するケースがあります。
排水管やグリース阻集器の詰まりについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
→飲食店厨房の排水溝・排水管|つまり・下水の臭い対策
→グリース阻集器の詰まりとは?
3-2.グリース阻集器の日常清掃のポイントと頻度
グリース阻集器は、日々の簡易清掃でトラブルの大半を防ぐことができます。
基本的には、三つの槽の役割に合わせて、次のポイントを押さえておきましょう。
3-2-1.①バスケット(第1槽)の清掃|食品残渣をその日のうちに回収
第1槽のバスケットには、野菜くず・麺類・揚げカスなどの固形残渣が最も多く溜まります。
放置すると腐敗や悪臭、害虫の発生につながりやすいため、毎日1回の清掃が理想です。
• バスケットを引き上げる
• 固形物を取り除く
• 必要に応じて中性洗剤で洗浄する
単純ですが、これだけで臭いや詰まりのリスクを大きく減らすことができます。
3-2-2.②油脂(スカム)の除去(第2槽)|浮上した油脂はこまめにすくう
第2槽には、調理油・揚げカスの油分が浮上し、スカムとして層を作ります。
油脂も放置すると悪臭・詰まりの原因になるため、2~3日に1回程度のすくい取りが理想です。
• 表面に浮いた油脂を網や専用スクーパーですくう
• ゴミ袋にまとめ、廃棄ルールに沿って処理
油脂は溜めれば溜めるほど処理が大変になるため、少量のうちに除去することがポイントです。
3-2-3.③トラップ管・第3槽周りの清掃|排水の通り道を確保
第3槽は比較的きれいな排水がたまる槽ですが、油分や汚れがゼロになるわけではありません。
出口付近(トラップ管)は特に固形化した油脂がつきやすく、排水不良の原因になることもあります。
• トラップ管内をブラシなどで軽く擦り洗い
• 2〜3ヶ月に1回程度が目安
• 排水の流れが悪いと感じたら早めに清掃
“出口が詰まると一気に逆流する”ため、意外と重要なポイントです。
4.グリース阻集器の徹底的な清掃は専門業者へ依頼を

残念ながら、日常的なバスケット清掃や油脂すくい取りだけでは、グリース阻集器内部の汚れを完全に取り除くことはできません。
第1槽の底に沈殿した汚泥は槽の深部まで入り込み、厨房スタッフの清掃ではすべてをすくい上げることが困難です。
また、第2槽・第3槽に付着した油脂も、目に見える部分だけ除去できても、仕切り板の裏側や配管まわりに残った油脂までは取りきれません。
こうした“素人清掃では届かない部分”に汚れが蓄積していくことが、トラブルの原因になります。
専門業者による清掃では、
• 各槽の底に溜まった 汚泥(スラッジ)の完全除去
• 仕切り板や槽内壁面に固着した 油脂(スカム)の除去
• トラップ管・排水管内部の 洗浄・逆流リスクの点検
• 設備の劣化や破損の 状態チェック
など、日常清掃では触れられない部分まで徹底的に清掃・点検します。
特に、
• 詰まりが繰り返し起こる
• 悪臭がすぐ戻る
• 清掃しても汚れが取れない
といった場合は、グリース阻集器内部に汚れが“深く”蓄積しているサインです。
飲食店にとって排水トラブルは、店舗の営業停止や評判悪化につながりかねない重大リスクです。
少なくとも半年〜1年に1回は、専門業者による徹底清掃を入れることで、日常清掃の効果も高まり、長期的なトラブル防止につながります。
専門業者による徹底清掃の内容は、こちらの記事で紹介しています。
→グリース阻集器の清掃・掃除方法、プロ業者のHACCP対応清掃テクニック
グリース阻集器を正しく使い続けるためには、
清掃だけでなく、容量の選び方・設置場所の判断・維持管理のルール・故障時の対応 といった“設備そのものの運用”もとても重要です。
是非、この機会に確認し、自店の管理および対策を強化してみてはいかがでしょうか?
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