排水処理施設の運営において欠かせないのが「沈殿槽」という設備です。
工場や商業施設など、さまざまな場所で活用されている沈殿槽は、
汚れた水をきれいにするうえで非常に重要な役割を果たします。

このガイドでは、「沈殿槽とは何か?」という基本から、
その仕組みや排水処理工程における役割までを、
図解イメージも交えてやさしく解説します。

1.沈殿槽とは?排水処理プロセスでの位置づけ

1-1.沈殿槽とは何か?

沈殿槽は、排水中の汚泥を重力の力で沈め、上澄みのきれいな水だけを次の工程へ送る役割を担う水槽です。
主にばっ気槽の後に設置され、微生物処理を終えた水から汚泥を分離するために用いられます。

処理水と汚泥を確実に分けることで、水質の安定や処理全体の効率向上に貢献しています。

1-2.排水処理の流れと沈殿槽の位置づけ


ばっ気槽から沈殿槽にかけての排水処理の流れを整理すると、以下のようになります
①汚れた排水がばっ気槽に流入
②ばっ気槽で微生物による分解処理
③沈殿槽で汚泥と水を分離
④上澄みの処理水を次の工程へ移送

沈殿槽は、この「3番目」の段階で登場します。
きれいにするというよりも、「分ける」ことに特化した槽なのです。

2.沈殿槽の仕組み|水と汚れが分かれるメカニズム

沈殿槽の内部は、重力の力で汚れを沈め、きれいな水だけを取り出すためのシンプルな構造になっています。
一般的には、主に以下のような要素で構成されています。

流入口:ばっ気槽などから排水が流れ込む入り口です。

沈殿スペース:水がゆっくり流れる広い槽で、汚泥が重力によって底に沈んでいきます。

底部の汚泥溜まり:沈んだ汚泥が集まり、一時的に留め置かれる場所です。

レーキ(スクレーパー):底に沈んだ汚泥をゆっくりと中央の集積部へ寄せ集めるための装置。
モーターの力で常に回転することで汚泥を集積します。

返送配管:沈んだ汚泥をばっ気槽へ戻すための配管です。

引抜配管:余剰汚泥を引き抜くための配管です。

流出口・越流堰:流出口はきれいになった上澄み水を次の工程へ流すための口です。
手前の越流堰が上澄み水を均等に流すよう設計されています。

2-1. 水より重いものは沈む

排水が沈殿槽に入ると、しばらく静かにとどまる時間が与えられます。
この間に、泥や微生物のかたまりなどの重たい成分が、汚泥としてゆっくりと槽の底に沈んでいきます。

2-2. 上澄み水だけを次へ送る

沈んだ汚れ(汚泥)は底にたまり、比較的きれいな水だけが上部に残ります。
この上澄み水は次の処理工程や放流先へと送られます。

2-3. 沈殿した汚泥の扱い

沈んだ汚泥には、処理に使った微生物なども含まれています。
これらの汚泥は、2つの用途に分けて処理されます。

返送汚泥:微生物が再び活躍できるように、ばっ気槽へ戻す汚泥。

余剰汚泥:使い終わった分を引き抜いて、別途処理や処分する汚泥。

このように、沈殿槽は汚れを取り除くだけでなく、微生物の再利用を可能にする循環の一部としても機能しています。

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3.沈殿槽が担う重要な役割とは?


最後に改めて、沈殿槽の役割を確認してみましょう。
沈殿槽は、排水処理のなかでも「安定した水質を保つ」ために重要な工程を担っています。

3-1. 水質を安定させる

沈殿槽がなければ、ばっ気槽で処理された水の中に残る微細な汚泥がそのまま流れてしまい、
次の処理槽や放流先でトラブルを起こしかねません。

沈殿槽がきちんと機能することで、きれいな上澄み水だけを次に送ることができ、処理水の水質が安定します。

3-2. 微生物の再利用で効率アップ

沈殿槽から返送される「返送汚泥」によって、ばっ気槽内の微生物の数や活性が維持されます。
これにより、排水の分解処理の効率が安定し、省エネルギーにもつながります。

3-3. 設備全体の負荷軽減

沈殿槽がしっかり機能していると、次の処理工程に流れ込む汚泥の量が減り、設備全体の負荷を下げることができます。
これは維持管理コストの削減にもつながります。

このように沈殿槽は、単に汚れを沈めるだけでなく、水質の安定化やシステム全体の効率化に大きく貢献しています。

沈殿槽の維持管理・清掃について、こちらの記事でまとめています。
あわせてご一読ください。

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