排水処理施設における沈殿槽の清掃は、単なる「汚れ落とし」ではありません。
水質の安定、設備の長寿命化、そして運営コストの抑制にまで関わる、非常に重要な業務です。
本記事では、沈殿槽に汚泥がたまる仕組みから、適切な清掃や汚泥引抜の方法、
さらに業者に依頼するメリットまでをわかりやすく解説します。

1.沈殿槽の清掃が重要な理由とは?

1-1.沈殿槽に汚泥がたまる仕組み

沈殿槽は、排水中の汚泥を重力によって沈め、上澄みの水だけを次の処理工程へ送る装置です。
この仕組み上、槽の底には必然的に汚泥がたまり続けることになります。

こちらの記事では、沈殿槽の仕組みと役割について、より詳しく解説しています。
あわせてご一読ください。

1-2.沈殿槽の汚泥を放置するとどうなる?

槽の底に溜まった汚泥は、定期的に引き抜きやばっ気槽への返送を行う必要があります。
汚泥を長期間放置すると、蓄積した汚泥から硫化水素が発生したり、
溜まりすぎた汚泥が水中に再浮上(バルキング)したりといったトラブルが発生します。

1-3.バルキング(汚泥浮上)の原因と影響


バルキングとは、汚泥が沈みにくくなり、上澄水との分離がうまくいかなくなる現象です。
バルキングが起こると、汚泥が沈殿槽から流出するキャリーオーバーが発生する恐れもあります。
結果的に、沈殿槽から次の槽へ送られる処理槽の水質が悪化してしまいます。

1-4.“見えない劣化”を清掃で発見

沈殿槽はふだん中を完全に覗くことが難しく、劣化に気づきにくい場所です。
内部の水を抜き、清掃を行うことで、以下のような設備異常の早期発見にもつながります。

・壁面や底部の塗装の剥離・劣化
・鉄部の腐食、シール(配管のパッキンや密閉部)の破損、配管のつまりや破損
・レーキ(汚泥をかき集める装置)の破損や機能不良

放置すれば大規模な修繕が必要になるような劣化も、
清掃時に点検・報告を受けることで、軽微なうちに対応が可能になります。

1-5.定期的な清掃のメリット

沈殿槽を定期的に清掃することで、これらのリスクを未然に防ぎ、水質の安定・施設の健全運営を実現できます。
トラブル対応よりも、計画的な清掃の方が結果的にコストも抑えられます。

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2.沈殿槽の清掃の基本、汚泥引き抜きとバルキング対策

2-1.清掃と汚泥引き抜きの方法

沈殿槽の清掃では、底にたまった汚泥を引き抜くだけでなく、壁や底にこびりついた汚れもしっかり落とすことが大切です。
これらの汚れを放っておくと、においが発生したり、水がきれいに処理できなくなったりします。
主な清掃作業には、次のような内容があります:

・表面に浮いている油や泡の除去
・底にたまった汚泥の引き抜き
・壁や底にこびりついた汚れの洗浄(高圧洗浄など)
・沈殿槽につながる各種配管の清掃
・各設備の目視点検や動作確認

こうした清掃および点検を定期的に行うことで、沈殿槽がしっかりと働き続けるようになります。

また、沈殿槽を清掃する際には、内部の水をあらかじめ引き抜く作業が必要になります。
そのため、処理施設全体の運転状況をふまえた計画的なスケジュール管理が重要です。

設備停止のタイミングや作業時間を見越して、余裕のある準備が求められます。

2-2.気になるバルキング対策

バルキングの主な原因は、沈殿槽の手前にあるばっ気槽の過負荷と酸素不足です。
ばっ気槽から沈殿槽へ処理能力を超える汚れが流入したり、酸素の供給が不十分だったりすると、
槽内の微生物が過剰に増え、沈みにくい汚泥が発生します。
そのため、バルキングが起きている場合は、沈殿槽だけでなく、
ばっ気槽の清掃および槽内の散気装置やブロワーの清掃・性能確認も重要な対策となります。

2-3.清掃作業の安全対策と注意点

沈殿槽内での作業には、転倒や酸欠などの危険が伴います。
特に注意すべきなのが硫化水素などの有毒ガスの発生です。

汚泥の分解が進むことで硫化ガスが発生し、
過去には槽内で作業中の作業員が倒れるといった重大な事故も報告されています。
清掃時には必ず複数人で作業を行い、換気・保護具の着用・照明確保などの安全対策が欠かせません。

3.沈殿槽の清掃は、専門業者に任せるのが安心

3-1.汚泥の状態を正しく判断し、最適な方法で対応

沈殿槽に溜まる汚泥の性状は施設ごとに異なります。
業者は経験と知見から、汚泥の状態に応じて適切な引抜量や作業方法を選定できます。

3-2.専用機材とノウハウによる安全・迅速な作業

深所・高湿にもなる得る沈殿槽内での作業には、高圧洗浄機や吸引車などの専用機材が必要です。
作業の手順や効率も、経験のある業者なら安心して任せられます。

3-3.清掃・点検だけでなく、修理にも対応

繰り返しになりますが、沈殿槽の清掃・点検時に、壁や配管の劣化、
装置の破損など思わぬ不具合が見つかることもあります。
こうしたトラブルにも対応できる業者なら、必要な修理まで一貫して任せられ安心です。

清掃・点検とあわせて修理も対応することで、施設の安定稼働をもたらします。

タカヤマの沈殿槽点検の事例は、こちらからご覧いただけます。

3-4.計画的な管理で運営負担を軽減

定期清掃や点検を業者に委託すれば、担当者の管理負担も減少し、
トラブル対応に追われるリスクを大きく下げることができます。

沈殿槽は、排水処理の質を支える“縁の下の力持ち”ともいえる存在です。
沈澱槽内の汚れや汚泥の適切な対応は欠かせません。

また、バルキングや劣化の予兆に未然気づくためにも、
必要に応じて専門業者の力を活用しながら、計画的に管理を行っていきましょう。

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