商業施設・工場・オフィスビルなど、多くの人が利用する建物では、
厨房や洗面所などから出る「雑排水」を一時的にためる雑排水槽が設置されています。
雑排水槽の役割や仕組みを正しく理解していないと、悪臭や逆流などのトラブルにつながることもあります。
本記事では、「雑排水槽とは何か」「どのような仕組みで動くのか」「どんな基準で設けられるのか」について、
施設管理に携わる方が押さえておきたいポイントをやさしく解説します。

1.雑排水槽とは?基本の役割と“汚水との違い”を解説

1-1.雑排水槽とは?どんな役割を担っているのか?

商業施設や工場、オフィスビルでは、日々多くの水が使われています。
厨房・洗面所・洗濯設備などから流れる排水には、石鹸・洗剤・食品残渣・油分・繊維くずなどが含まれ、
これらをまとめて「雑排水」と呼びます。

多くの建物では、こうした雑排水が地下階に集中して排水される構造になっています。
しかし地下階は、建物の外にある下水道本管よりも低い位置にあるため、自然勾配では下水へ流すことができません。
そこで必要になるのが、雑排水を一時的にため、ポンプでくみ上げて下水道へ送るための貯留槽=「雑排水槽」です。

雑排水槽は、

・雑排水をためる
・ポンプでくみ上げられる状態にする
・安定した排水ルートを確保する

という「排水の中継地点」としての役割を担っています。

一方で、雑排水には油分や固形物が多く含まれるため、槽内に汚れが滞留しやすいという特徴があります。

そのまま放置すると、

・悪臭の発生
・配管の詰まり
・ポンプ故障・アラーム発報
・逆流・溢水によるフロア被害

といったトラブルにつながる恐れもあります。

1-2.雑排水と汚水の違い

雑排水とよく混同されるのが、トイレから流れる「汚水」です。
両者は使われる場所も汚れの種類もまったく異なるため、この違いを理解することが大切です。

●雑排水(ざつはいすい)
厨房・洗面所・洗濯設備などから流れる生活系の排水で、
・石鹸
・洗剤
・食品残渣
・油分
・繊維くず
などが混ざっています。
トイレ排水ほど汚れてはいませんが、油分や固形物の影響で詰まり・悪臭・汚泥化が起こりやすいのが特徴です。

●汚水(おすい)
トイレから流れる排水で、雑排水よりも汚れが強く、衛生的なリスクも高いのが特徴です。
そのため汚水は、雑排水とは別の配管・別の処理ルートで流されます。

トイレ排水を扱う「汚水槽」について知りたい方は、こちらもご覧ください。
汚水槽とは?仕組み・構造・清掃方法をやさしく解説

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2.雑排水槽の仕組み|どのように排水をためて処理するのか

雑排水槽は、建物内で発生した雑排水を一時的にため、ポンプでくみ上げて下水道へ排出するための設備です。
ここでは、雑排水槽がどのような構造で、どんな流れで排水を処理しているのかを見ていきましょう。

2-1.雑排水槽の基本構造(槽・仕切り・流入管・ポンプなど)

一般的な雑排水槽は、次のようなシンプルな構造でつくられています。

●蓋(マンホール蓋・点検口)
→槽の点検・清掃・保守で必ず使用する部分。
●流入管
→厨房・洗面所などから雑排水が流れ込む入口。
●槽(タンク部)
→雑排水をためるスペース。コンクリート槽やFRP槽など種類がある。
●仕切り(ある場合)
→ゴミの流入を抑えたり、揺れやすい水面を安定させたりするための内部仕切り。
●雑排水ポンプ(排水ポンプ)
→ためた雑排水をくみ上げて下水道へ送水する装置。
●フロートスイッチ(浮き玉)
→水位を感知し、ポンプの自動ON/OFFを制御するセンサー。
●換気・通気設備
→槽内にガスが溜まるのを防ぎ、悪臭の停滞や危険を避けるための通気管。

このように雑排水槽は、“ためる槽” 本体に加え、蓋・通気・ポンプ・水位制御の組み合わせで機能する設備です。

2-2.雑排水がたまる→くみ上げられる→排水されるまでの流れ

雑排水槽の動きはとてもシンプルで、以下の3ステップで成り立っています。

①各設備から雑排水が流れ込む
厨房・洗面・洗濯設備などで発生した雑排水が、流入管を通って槽の中に集まります。

②槽の水位が上がると、フロートスイッチが作動
槽の水位が一定の高さに達すると、フロートスイッチが反応します。
これにより、ポンプが自動で起動し、排水の準備が整います。

③ポンプが雑排水をくみ上げて下水へ排出
作動したポンプが、槽内の雑排水をくみ上げ、下水道本管へ送水します。
水位が下がると、再びフロートが反応してポンプが停止する仕組みです。

このサイクルを繰り返すことで、建物の排水をスムーズに処理できるようになっています。

2-3.雑排水槽の故障・異常が起こりやすいポイント

雑排水槽は構造こそシンプルですが、汚れが溜まりやすい設備でもあるため、以下の部分で不具合が出やすくなります。

・フロートスイッチの動作不良(油分・汚れで動かない)
・ポンプの詰まり・故障(固形物が原因)
・通気不良による悪臭の発生
・槽内の塗装剥がれや腐食
・逆流防止弁の故障による逆流
・蓋の劣化・破損

こうした異常が起こると、悪臭・逆流・溢水・アラーム発報・ポンプ停止など、施設運営に直結するトラブルを引き起こします。

3.雑排水槽の設置基準|“地下排水槽の指導基準”に沿って設置する必要があります


雑排水槽(地下排水槽)は、多くの自治体で制定されている
「地下排水槽の設置や維持管理に関する指導基準」に沿って設置することが求められています。

これらの基準では、雑排水槽の構造・容量・点検方法などが定められており、
建物の排水が安全に機能するよう設計することが必須とされています。

また、厨房排水には油脂類・野菜くず・食品残渣などの有機物が多く含まれます。
これらがそのまま排水槽に流入すると、

・下水の腐敗促進
・ポンプの閉塞・故障
・槽内汚泥の増大

などの原因となります。

そのため指導基準では、雑排水槽に流入する雑排水系統には、
「グリース阻集器(グリストラップ)を必ず設け、油脂や固形物を事前に除去すること」が明確に求められています。

雑排水槽は「ためて・くみ上げる」設備であり、油脂の分離機能は持たないため、
“グリストラップ → 雑排水槽 → ポンプ → 下水道”
という正しい流れを整えることが設置基準の大きなポイントとなります。

雑排水槽の前段となるグリストラップの基礎知識はこちらで解説しています。
グリストラップとは?

4.まとめ|雑排水槽を正しく理解し、トラブルを未然に防ごう

雑排水槽は、地下階など自然に排水できない場所の雑排水を一時的にため、ポンプで下水道へ送り出すための重要な設備です。
設備を安全に運用するためにも、雑排水槽の仕組みや設置基準を正しく理解し、必要に応じて専門業者へ相談することをおすすめします。

繰り返しになりますが、雑排水槽は見えにくい場所にあるため、トラブルの発見が遅れやすい設備でもあります。
正常な運転を続けるためにも、定期的な点検や清掃も欠かさずに行うようにしましょう。

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