
排水処理施設の中でも、特に汚れやすく、トラブルが起きやすい「流量調整槽」。
清掃や点検を怠ると、悪臭や機器の故障、
さらには施設全体の機能停止につながる恐れもあります。
この記事では、流量調整槽の清掃・点検・維持管理の重要性と
具体的な方法を、わかりやすく解説しています。
1.流量調整槽の清掃・点検が必要な理由とは?
1-1.流量調整槽は、実は“汚れやすく壊れやすい”
流量調整槽は、原水槽を経て処理されていない排水が流れ込む場所です。
油分や汚れが多く含まれた排水が時間帯によって大量に流れ込むため、
原水槽と並んで汚れやすく、劣化しやすい槽のひとつといえます。
また、ポンプやフロートスイッチといった機器類も日々酷使されています。
1-2.臭気・詰まり・ポンプ故障…清掃しないとどうなる?
清掃が不十分なまま放置しておくと、以下のようなトラブルが発生します。
・溜まった油や汚泥が腐敗し、硫化水素などの悪臭を発生
・ゴミや油がポンプに詰まり、送水不能や逆流の原因に
・フロートスイッチに油が付着し、ポンプが誤作動または停止しない状態に
・排水が流れず、蓋から水が溢れ、駐車場や施設内が水浸しになるケースも
日々の施設運営を安全に保つためにも、定期的な清掃・点検は不可欠です。
1-3.フロートスイッチやポンプの不具合リスクとは
流量調整槽には、排水の水位を感知してポンプを作動させる
「フロートスイッチ」という装置が付いています。
この部品は魚釣りのウキのようなもので、
水が一定の高さに達すると浮き上がり、スイッチが入る仕組みです。
ところが、油や汚れがこびりつくとスムーズに動かなくなり、
次のような問題が起こります。
・水がなくてもポンプが動き続けて空回りし、オーバーヒートで故障
・水が溜まってもフロートが上がらず、ポンプが作動しない
このような不具合は、清掃を怠ることで起きやすくなるため、点検と洗浄が欠かせません。
流量調整槽がおかしい!?緊急の場合はこちら
2.流量調整槽の清掃と点検の流れ|維持管理の基本を解説
2-1.清掃前の準備|迂回設備・計画的スケジュールが重要
流量調整槽の清掃には、水槽のサイズにもよりますが、
最短でも丸1日の作業期間が必要です。
さらに、施設が24時間稼働している場合は、
排水を一時的に迂回させる配管の設置が必要になることもあります。
そのため、以下のような事前の計画と準備が欠かせません。
・清掃期間中の排水処理計画(施設休止期間の活用など)
・迂回路の設置・一時貯留設備の手配
・清掃業者との打ち合わせ・作業工程の確認
スケジュールに余裕を持って計画を進めましょう。
2-2.清掃の流れ|ポンプ操作→汚泥吸引→高圧洗浄
流量調整槽の清掃は、以下のような工程で行われます。
①ポンプで槽内の水を排出
②バキューム車で底部にたまった汚泥を吸引
③高圧洗浄機で槽内壁面を洗浄
④ポンプ内部やフロートスイッチの洗浄・動作確認
⑤水を再投入してポンプ・フロートのテスト運転
このとき、油汚れや固着物が多く確認されるケースも多く、
手作業での除去が必要になることもあります。
2-3.点検のポイント|動作確認・油の付着・劣化箇所チェック
清掃とあわせて、以下の点検を行うのが維持管理の基本です。
・ポンプの作動状況(回転・停止・振動の有無など)
・フロートスイッチの反応と設定位置
・槽内の塗装状態や腐食・剥がれの有無
・槽の蓋や配管の腐食状況
とくに、日々稼働しているポンプやセンサー類は経年劣化しやすいため、
慎重なチェックが求められます。
3.清掃で見つかる劣化と修理の必要性|見過ごせない維持管理の落とし穴
3-1塗装の剥がれ・ポンプ劣化・フロート故障が起きやすい理由
流量調整槽は、想定以上の高温排水や酸性ガスにさらされることもあります。
そのため、
・内壁塗装の剥がれやコンクリートの劣化
・ポンプの異常摩耗
・フロートスイッチの破損や固着
といった劣化が、清掃後に発覚するケースも少なくありません。
3-2.ポンプ交換も万が一に備えて行おう
清掃時にポンプの異常が見つかった場合、
ポンプの修理・交換が必要になることもあります。
多くの施設ではポンプが2基体制になっているため、
1基でも動いていれば、運転に影響はありません。
ただ、万が一に備えて、早めの修理・交換が肝心です。
3-3.年1回の清掃と点検で“壊れる前の対応”を
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、最低でも年1回の定期清掃・点検が理想的です。
繰り返しになりますが、清掃時には内部の劣化や故障が見つかることもあり、
修理や部品交換が必要になるケースも少なくありません。
「問題が起きてから対応する」のではなく、
“壊れる前に手を打つ”維持管理が、安全かつ経済的な施設運営の鍵となります。
こちらの記事では、「そもそも、流量調整槽とは?」何なのか、
その役割やしくみについてわかりやすく解説しています。
あわせて、ご一読ください。
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